映画「二十四の瞳」で有名な小豆島に巨大ダム建設計画が知らされたのは1999年のことでした。
 度重なる渇水に悩んできた小豆島に、1997年吉田ダムが完成し、「これで水は安心」と思った矢先でした。
 旧内海ダムは1956年(昭和31)利水目的のダム(堤長100m)として完成し、1959年(昭和34)に洪水調整機能を持たせた多目的ダムとして改修されました。ところが、1978年(昭和53)に豪雨の中、管理人が放水ゲートを閉じたままダムを離れたために堤体を超流し下流域で床上・床下浸水の被害を出しました。構造に不安を覚えた地元住民の改修・強化の要望を長年無視し続けてきた香川県の計画は、185億円をかけ旧ダムの7.5倍、全長447mの巨大ダムを建設するというものでした。目的は利水と治水です。流路延長わずか4㎞の別当川に、河川の長さの1割を超える堰堤が計画されたのです。それはダム湖の奥行きよりも長い堤長でした。
小豆島では過疎化、人口減少が続き、吉田ダム完成後は給水制限もなく、水道水源には余裕があります。しかも景観を損なうものです。

 もう一つの目的である治水の必要性の根拠は、死者を出す大災害をもたらした1974年(昭和49年)76年(昭和51年)の台風の大雨でした。しかし、新内海ダムが建設される別当川では被害は少なく、他の渓流、河川の土石流が原因であることは明らかでした。さらに新内海ダム(穴あきダム)では治水能力は限定的で、むしろ河川の一部改修の方が実効性があると考えられました。

 「まず初めに建設ありき」の計画に住民は反対の声を上げましたが、「見返り事業」や土地収用で、反対の声は徐々に封じられていきました。
 環瀬戸内海会議は、反対する住民の思いを共有し、立ち木トラストや街頭宣伝など協力して支援してきました。
 民主党政権下では見直し対象とされたダムですが、香川県はこれを無視し、2009年国は土地収用法に基づく事業認定を行い、県収用委員会は収用裁決してしまいます。

 ダム計画、土地収用に反対してきた住民で作る「寒霞渓の自然を守る連合会」は、すぐさま国の事業認定が無効であるとして、取消を求める訴訟に踏み切りましたが、香川県は2010年(平成22)に着工し、2013年(平成25)完成させ、試験湛水も行わずに竣工式典を行ってしまいます。


完成した後の判決では、事業認定は適法であったとされました。
 湛水後、堤体のひび割れ、漏水が確認され、2014年(平成26)伊予灘地震で拡大したことから、3つの断層、軟弱な地盤の上に建設されたダムの安全性が、下流住民の新たな不安となっています。


 こうした、瀬戸内海に流入する一・二級664河川に建設された、1000基に及ぶダム群は、堆砂や栄養源の滞留など、瀬戸内海に及ぼす影響も大きく、新たな課題になることが懸念されます。